『企業財務健全化のための、資金繰り戦略』資金繰り戦略


日本ビジネスドック診断指導協会 副理事長 秋澤重也


1.時代が変われば営業のやり方もわかる


 はじめに:21世紀の企業経営は、損益(P/L)思考からキャッシュ・フロー(C/F)重視の戦略へと転換されていることはご承知の通り。つまり、期間利益だけを重視することなく、期間の資金の余剰も重視する経営戦略に変わってきています。金融機関が企業を見るポイントもキャッシュ・フローです。
 T.経営計画は資金繰表の作成中心で 21世紀の経営の基本姿勢は「勘」の経営ではなく「計数」に基づいた経営です。計数に基づいた経営を行うには経営計画の作成が必要です。経営計画は、従来は目標利益算出のために作成されている傾向でしたが、現在ではそれに加えて、資金繰りの内容まで作成しております。「予想資金繰表」を作成するための資料は、@月別売上高明細表(売上先別月別売上高と月別回収金額)とそれに伴うA仕入高明細表(仕入先別月別仕入高と月別支払金額)、並びにB月別経費明細表並びにC月別資産の購入計画明細表D長短借入金の返済並びに新規借入計画表等を参考にします。@〜Bの資料は経営計画書の作成の際の基本となる計算書ですから「資金繰表」作成のために新たに作成する表ではありません。CとDの計算書も通常の経営計画作成の際には必ず添付されている性格の計算書です。従来は、これらの資料を活用して、予想または目標利益の算出のみに使用されていた計算書です。この資料を更に有効活用して資金繰りの面まで計画を建てていく事が重要です。
 U.大切なことは計数管理の徹底 折角作成した「資金繰表」があっても、予定通りに資金の収支がうまくいかないケースが多いです。この最大の理由は、経営計画の策定が@間違っている、A甘い、B人任せ、のいずれかです。計画を建てる時には各担当者を交え時間を掛けて計画を練っていくことが
 最も必要なことなのですが、これを怠っていることと、担当者の責任感の欠如が原因のようです。
【図表-1 営業部門売上計画書】
販売担当 日本 太郎 第16期計画書
販売先(有限会社 一太郎商店)







(単位:千円)
  4月 5月 合計金額
売上高 1,400 1,600 18,000
現 金 140 160    
手 形 1,260 1,440



4月/10月 140   4月  140 10月 1,650
5月/11月 560 160 5月  720 11月 1,800
6月/12月 700 640 6月 1,490 12月 1,940
合 計 1,400 1,600 8,760 6,240
 従って、経営計画を作成するときは、担当者別に【図表ー1】の様式による計画書の提出とこの計画を実行するための具体的戦略、方策等を文章にて提出させ、それを検討することが重要なのです。同時にこれに伴う「仕入部門計画書」も必要です。もちろん「資金繰表」の作成はこれだけでは不十分なので、受取手形明細表・支払手形明細表も必要です。たとえば第15期の売上高は17百万円で期末における売上債権(受取手形と売掛金の合計額)の残高は2百万円であったとします。【図表ー1】が第16期の計画の全貌であるとした場合、期末の売上債権の予想残高を計算してみると「15期末の売上債権残高2百万円+16期中の売上高18百万円-16期中の回収合計額15百万円(8,760+6,240)=5百万円(2,000+18,000-8,760-6,240)」と言うことになります。第16期の損益計算書面での売上高は18百万円であったとしても、第16期中に売り上げた商品に対する現金回収は15百万円(8,760+6,240)、第16期中の現金の回収(入金)の総額は17百万円(2,000+15,000)です。ここでこのケースについて検討を加えてみると売上債権の残高は第15期末より3百万円増加しているので、第16期の営業活動計画は必ずしも良好とは言えません。従って、営業担当を加え再度販売(回収)条件について検討し、少なくとも売上債権の残高が前期末と同額またはそれを下回るように計画を建て直す必要があります。第16期は売上高に対する回収率は83.33%(15,000÷18,000×100)、売上債権回転率3.6回(18,000÷5,000)同期間101日(365日÷3.6回)または3.3ヶ月(12ヶ月÷3.6回)ということになります。一方第15期の場合の回転期間は8.5回(17,000÷2,000)同期間は43日(365÷8.5)、1.4ヶ月(12÷8.5)ですから第16期の回収条件はかなり悪い計画になっていたことになるので再検討が必要です。この例の様に資金繰りの最終結果の予測を勘に頼ることなく計数(今回の場合は計画書と回転率・同期間)をベースとして期首に計算し、計画を建てることにより年間の実態を把握することができ、そこで決定された内容を実施していけば良い訳です。V.棚卸資産の増減に注意 代金回収の遅れは資金繰りを狂わす第一の要因ですが、第二の要因は棚卸資産の増加です。在庫が増加してしまう原因は一、経営計画に基づいた仕入であったが当該商品の納入(売却)ができなくなった。二、大量購入すると安いと言うことでの過剰仕入、三、杜撰(無計画)な仕入等が考えられます。いずれにしても、過多の在庫は資金繰りを悪化させるもとです。従って在庫管理(商品の仕入から販売までの一連の管理)が重要です。在庫管理は膨大なデーターを処理しなければならないので、手作業では処理仕切れません、また従業員(特に営業担当者)の一部は在庫問題に触れたく無いので留意してくれないケースも多いと言われています。従ってコンピューターでデーター管理することが必要です。それが出来ない場合であっても毎月「実地棚卸」をすることを薦めます。
 実地棚卸が出来ると【図表ー2】にあるように担当者別・月別・商品別に「商品管理表」を作成することが出来ます。1.仕入高・売上高共に発生主義(荷物の到着時・発送時)でその都度記入する。2.差引残高は売上高ー仕入高で算出する。3.月末に実地棚卸を実行する。その結果、月中の原価は1,150千円(300+1,100-250=1,150)、売上総利益400千円(1,550-1,150=250+450-300=400)と算出することが出来ます、また担当者の立場に立ってみると、月初の棚卸残高は300千円であった商品が、月末では250千円に減少しているということが判ること、更には計画した毎月の粗利益を確認すること出来るというメリットがあります。実地棚卸を行うことにより、営業担当者自身が、在庫になっている商品の数量・色柄などを実際に確認できると言うメリットもあります。資金繰り上プラスとなっているのかマイナスとなっているのかは、この表では把握できませんが、売上計画表(図表ー1)-仕入計画表(売上計画表の応用)から判断することが出来ます。上記の通り、利益を追求することも重要ですが、計算諸表を上手に活用することにより利益と資金繰りの両方が容易に把握できます。皆様も是非活用して下さい。
【図表ー2】 4月度商品管理表 担当者
○月初残高         300千円
仕入高 売上高 差引残高
5 400 600 200
10 550 500 150
15 0 100 250
20 150 200 300
25 0 150 450
1,100 1,550 450
月末実地棚卸残高 250
売上高1,550 原価1,150 粗利益400


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